越前屋、お主も悪よのう

WEB屋の日常。

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裁判員裁判傍聴 その2

   

昨日は、傍聴後そのまま仕事。詳しいエントリーが書けなかったのでまとめました。

1. 裁判員は無理矢理質問をしている感。
向かって左から順番に、一人一質問。被告が的外れの回答をしたのも、そもそも質問の意図がわかりにくく、裁判員の声も聞き取りずらかったためではないでしょうか。すかさず裁判官がフォローしたのも、手際がよすぎました。本日急遽補充された男性裁判員の突然の質問に驚いたのも、予定外のことだったからでしょう。裁判官は裁判員を完全にコントロール下に置きたかったと見てとれます。

2. 検察官の手際が妙に良すぎ。
威信がかかっているのでしょう。何度もリハーサルをした感があり、むしろライブ感にかけるほど。モニターに映すことを前提にしたプレゼンテーションは、青黒のグラデーションの背景に白太文字、強調は黄色、文字は大きめで少なく、基本的にアニメーション(テキストを出していく程度)を使用、プレゼンでよくある無難なものです。そのままプリントすると、どっかの社長に「紙とインクの無駄遣い」と言われかねないものになるので、裁判官・裁判員に提出されたものは別フォーマットであると考えられます。

3. 弁護側はやや遅れ気味。
こちらもパワーポイントで作成したと思われるものですが、検察側と比べると明らかに見劣りしていました。バージョンも2世代ぐらい前のものでしょうか?1スライド内に原色を多用し、配置も汚く、大型モニターでも確認するには厳しいぐらい文字が詰まってます。背景は白なので、おそらく印刷を前提しにしたものを、モニターで映しているだけでしょう。もともと苦しい立場の弁護なので内容は無難なものでした。デザイナーというか、プレゼン・パワポ慣れした人材が一人いれば、改善されるものなので問題はないでしょう。

4. やっぱり金。
弁護費用を払えないなら、検察が圧倒的に有利。ただし検察にも予算があると思うので、注目度が低く、社会的に重要でない事件に大枚ははたけないはず。被告が弁護士費用に糸目をつけなければ、検察と弁護側の立場は逆転すると思います。ただし、あまり金持ち風をふかせると逆効果でしょうが、そこまで含めて対策してくると考えられます。

5. 被告に共感できる人はいない。
事件前日、競馬で負け、大量に飲酒。当日朝、焼酎1合を向かい酒。被害者と口論の上、サバイバルナイフを持ち出して殺害。その後、競馬場に行く。途中、飲酒。45年前に傷害致死(プロレス技をかけた)、粗暴犯の前科多数、前の刑で刑務所を出てから5年経っていない、生活保護を受給。前科は別としても、朝から酒を飲み、生活保護を受けているのに競馬に通っているという被告に、本心で共感できる人は裁判官・裁判員はもちろん、マスコミ・傍聴人を含め、あの法廷内には一人もいない可能性があります。唯一、同情があるとすれば被告が72歳と高齢であること。10年以上の刑は、刑務所で一生を終えるということを意味します。

6. 死人に口なしを強調する被害者代理人。
被害者一家のバイクがUターンをする時、被告の庭に侵入する必要があったことは、道幅の関係からも事実のようです。その際、猫よけのペットボトルを倒された(被害者側は否定)。さらに軽自動車を止めて通行を妨害などトラブルもあったようです。被害者が気が強く、一言多い性格(長男は公判で否定)で、ペットボトルが倒れているのことで口論に鳴った際「てめぇが倒しておいて人のせいにするんじゃねぇ。馬鹿野郎」「生活保護を受けているくせに」と辛辣な言葉を浴びせ、サバイバルナイフで脅した時も「やるのか。やるならやってみろ」とあごや肩につかみかかろうとした、被害者は被告より若く体型がよく「もはや刺すしかない」と思った(以上、被告と弁護側の主張)。被害者代理人は一連の被告の主張を「死人に口なしをいいことに、自分に都合のよいストーリーを作り上げ、被害者を冒涜する行為」と一蹴。被告の素行、主張に一貫性もないことから「被告の証言は信用に値しない」と20年の量刑を要求。

7. 結論(量刑)先にあり。
初めての裁判員裁判なので「素人が情に流されて量刑が重くなった」あるいは「裁判員がいても結局は裁判官のいいなりだった、制度の意味がない」という相反する批判をかわす為に「極めて常識的で、ちょっとだけ一般人の感覚が反映された量刑」が出されるのではないでしょうか。本件の場合「一般人の感覚」ですと、刑が重くなる方向(16年を主張する裁判員もいると思います)ですので、検察の16年に裁判官が8掛け(これは私の予想)して12.8年に+1〜2年、15年だと安易な感じがするので14年ぐらいと予想します。

8. 理由は後付け。
最大の考慮点は被告の高齢、次にトラブルがあった事実。その2点以外、被告に有利になる証言は認められないでしょう。

9. やっぱり無理がある裁判員制度
やっぱり一般人が裁判に参加する必要があるのか疑問です。結局、無難な質問ぐらいしか聞くことができないのに、その後の被告の人生に責任を負わなければいけません。事実、裁判員の一人は体調不良になりましたし、プレッシャーは大変なものだと思います。裁判員というよりは、判決時には全員の承認が必要ながらも、裁判監視員ぐらいの立場でいいのではないでしょうか。

以上、判決は本日14:30。

←裁判員裁判傍聴
http://echizenya.biz/yamabuki/?p=1805

追加

【裁判員 判決】国民参加の結論は懲役15年
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090806/trl0908061440008-n1.htm

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